
五臓とこころの関係
漢方では、心と体を支える5つのはたらき「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」が、 それぞれ特定の感情とつながっていると考えます。
ここでは「どんな気持ちのときにどの五臓が乱れるのか」 「五臓が乱れるとどんな気持ちになるのか」を、むずかしい言葉を使わずに紹介します。
😶 こんな気持ち → どの五臓?(早見表)
※ これは漢方の古くからの考え方をやさしく紹介したものです。体調がすぐれないときは、 自己判断せず医療機関にご相談ください。
肝(かん) — 怒り(イライラ)
気持ちをのびのびと流す「ストレスのさばき役」
🌱 どんなはたらき?
肝は、体の中を流れる「気」(エネルギー)をのびのびと巡らせる役割を持つと考えられています。気持ちがスムーズに動けるよう助けたり、これからの計画を立てたり、決断したりする力にも深く関わっています。また、ため込んだストレスをうまく外へ流し出すはたらきも担っています。
😔 こんな気持ちが続くと「肝」が乱れる
イライラや怒りが長く続いたり、強い緊張状態・プレッシャーが重なったり、ずっと我慢しつづけたりすると、肝のはたらきが乱れやすいと考えられています。特に「怒り」や「抑えつけた気持ち」は肝にいちばん影響しやすいといわれています。こうしたストレスが積み重なると、気の流れが滞って、心身のバランスが崩れやすくなります。
- 強いイライラ・怒りが続く
- ストレスを抱え込みすぎる
- 我慢しすぎて気持ちを外に出せない
- 強いプレッシャーにさらされる
- 緊張や焦りが長く続く
- 感情をうまく言葉にできないまま放置する
💭「肝」が乱れると、こんな気持ちになる
肝のはたらきが乱れると、気持ちのコントロールが難しくなり、些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりしやすいといわれています。また、気が短くなる・落ち着かない・ため息がよく出る・なんとなく憂うつな気分になる、といった変化が現れることがあります。心が「のびのびできていない」と感じたら、肝のケアを意識してみるとよいかもしれません。
こころのサイン
- ・些細なことでイライラしやすい
- ・怒りっぽくなる・感情が爆発しやすい
- ・落ち着きがなくなる
- ・ため息が増える
- ・なんとなく憂うつな気分
- ・決断や計画が進まない
- ・精神的な緊張が抜けない
からだのサイン
- ・目の疲れ・充血・かすみ
- ・頭痛・頭の張り感(特にこめかみ)
- ・筋肉のひきつり・こわばり
- ・爪が割れやすい・ もろくなる
- ・わき腹・胸のあたりの張り感
- ・生理不順・生理前の不調(女性)
🌿「肝」を整えるヒント
- ✓深呼吸や軽いストレッチで体をほぐし、気を巡らせましょう
- ✓怒りやストレスを感じたら、日記に書き出すなど「外に出す」習慣をつけて
- ✓無理な我慢をやめ、気持ちをやさしく言葉にしてみましょう
- ✓緑色の野菜やすっぱいものを意識して食べるとよいとされています
- ✓早寝をこころがけ、肝が「休んで回復する」夜中の1〜3時ごろに眠れるとベスト
- ✓散歩など自然の中で体を動かすと、気の巡りが促されると考えられています
- ✓音楽を聴く・好きなことをするなど、こころを解放する時間をつくりましょう
おすすめの食べもの
📖 言葉の解説
- 気(き):体や心を動かす目に見えないエネルギーのこと。漢方では「気」が全身をスムーズに巡ることが健康の基本と考えられています。

心(しん) — 喜び(高ぶり)
こころの司令塔。安心と眠りを守る大切な場所
🌱 どんなはたらき?
漢方の「心(しん)」は、西洋医学でいう心臓とはすこし意味が異なり、「神(しん)」と呼ばれるこころ・意識・思考のはたらき全体を宿す場所とされています。気持ちの安定、眠りにつく力、記憶、感情のバランスなど、精神的な活動のすべてを司ると考えられています。「心」が穏やかであることが、心身の健康の土台になります。
😔 こんな気持ちが続くと「心」が乱れる
過度な興奮・喜びすぎ・ハイテンションが長く続いたり、考えすぎや不安・心配が積み重なったり、大きなショックや悲しみを受けたりすると、「心」のはたらきが乱れやすいと考えられています。特に感情の波が激しいときや、ゆっくり休めないときは「心」に負担がかかりやすいとされています。
- 過度な興奮・ハイテンション状態が続く
- 喜びや驚きが激しすぎる
- 不安や心配ごとが積み重なる
- 悲しみ・ショックな出来事を抱える
- 考えすぎて頭が休まらない
- 睡眠不足や夜ふかしが続く
💭「心」が乱れると、こんな気持ちになる
「心」のはたらきが乱れると、根拠のない不安感が強くなる・胸がドキドキする・夜なかなか眠れない・眠りが浅い・落ち着かないといった変化が現れることがあります。また、物忘れが増えたり、集中しにくくなったり、夢ばかり見て疲れたりすることもあります。こころが「ざわざわして落ち着かない」と感じるときは、「心」を休ませてあげましょう。
こころのサイン
- ・根拠のない不安・ドキドキ感
- ・なかなか寝つけない・眠りが浅い
- ・夢を多く見て、朝でも疲れている
- ・物忘れ・集中力の低下
- ・気持ちが落ち着かない・ソワソワする
- ・感情の波が激しい
- ・気力がわかず、何もしたくない
からだのサイン
- ・動悸・胸のドキドキ
- ・顔や胸がほてる
- ・手のひらや足裏が熱くなる
- ・汗が出やすい(特に手足や胸)
- ・舌が赤くなりやすい・口内炎ができやすい
🌿「心」を整えるヒント
- ✓夜は静かにリラックスする時間をつくり、スマホやテレビはなるべく早めにオフに
- ✓深呼吸やゆっくりとしたストレッチで、高ぶった気持ちを落ち着かせましょう
- ✓感情を激しく揺さぶるコンテンツの見すぎに注意して
- ✓規則正しい睡眠リズムを大切にしましょう
- ✓赤い色の食材や苦みのある食べ物が「心」をやさしく助けるとされています
- ✓静かな音楽を聴く・瞑想するなど、こころを静める習慣を
- ✓悩みや感情を一人で抱え込まず、信頼できる人に話してみましょう
おすすめの食べもの
📖 言葉の解説
- 神(しん):漢方でいう「神」とは、こころ・意識・思考・感情など、精神的なはたらき全体のことを指します。「心(しん)」という臓器に宿ると考えられており、「神が安定している」とは、こころが穏やかで落ち着いた状態を意味します。

脾(ひ) — 思い悩み(考えすぎ)
食べ物から元気を作る「くよくよ担当」の五臓
🌱 どんなはたらき?
脾は、食べたものを消化して体に必要な栄養や「気」(エネルギー)を作り出す役割を担っています。思考や集中力にも関わっており、心が安定しているとき、脾のはたらきが活発になると考えられています。また、考えることやくよくよすることが多いと、脾の負担が増えやすいといわれています。
😔 こんな気持ちが続くと「脾」が乱れる
ひとつのことを何度も何度も考えてしまう「考えすぎ」、心配しすぎること、思い悩むことが続くと、脾のはたらきが滞りやすいと考えられています。特に食事中も悩みごとを考えていたり、食事を抜きがちだったりすると、脾が弱りやすくなります。くよくよ・グルグル思考が「脾」へのいちばんの負担といわれています。
- 考えすぎ・グルグル思考が止まらない
- 心配しすぎる・不安が強い
- ひとつのことをいつまでも引きずる
- 食事を不規則にとる・抜きがちになる
- 胃腸に不調がある中でさらに悩む
- 完璧主義でプレッシャーをかけ続ける
💭「脾」が乱れると、こんな気持ちになる
脾のはたらきが乱れると、なんとなくだるい・体が重い・やる気が出ないといった気力低下が現れやすいといわれています。また、くよくよ・くよくよが増えたり、食欲がなくなったり、消化不良やむくみを感じたりすることもあります。脳に栄養が届きにくくなることで、集中力や記憶力が落ちることもあると考えられています。
こころのサイン
- ・やる気が出ない・気力がわかない
- ・何事も面倒に感じる
- ・くよくよ・グルグル思考が増える
- ・集中力・記憶力が落ちる
- ・心配ごとが頭から離れない
- ・気持ちが重くなる・ブルーになりやすい
- ・ぼーっとして頭が働かない
からだのサイン
- ・食欲がない・食べる気がしない
- ・お腹が張る・消化不良
- ・体がだるい・疲れやすい
- ・手足がむくみやすい
- ・軟便・下痢しやすい
- ・顔色が黄みがかる
🌿「脾」を整えるヒント
- ✓食事はゆっくりよく噛んで、なるべく決まった時間にとりましょう
- ✓考えすぎを感じたら、意識して「今この瞬間」に戻る練習(マインドフルネス)を
- ✓温かいものを食べ・冷たいものや生ものを控えると脾にやさしいとされています
- ✓甘みのある食材(自然な甘さ)が脾を助けるといわれています
- ✓一定のリズムで体を動かす(散歩など)と消化を助けます
- ✓悩みごとは紙に書き出して「頭の外に置く」習慣をつけましょう
- ✓昼寝を短くとるのも、脾の回復に効果的とされています
おすすめの食べもの

肺(はい) — 悲しみ・憂い
呼吸で気を巡らせる「悲しみのデトックス役」
🌱 どんなはたらき?
肺は、呼吸を通じて空気中の「気」(エネルギー)を体に取り込み、全身へと届ける役割をしています。また、体の表面(皮膚や鼻)を守るバリア機能も担うとされています。感情の面では、悲しみや憂いと深く関わっており、気持ちを切り替えたり、感情を手放したりする力とも関係があると考えられています。
😔 こんな気持ちが続くと「肺」が乱れる
悲しみ・落ち込み・喪失感(大切なものを失った気持ち)・くよくよとした憂いが長く続くと、肺のはたらきが乱れやすいと考えられています。泣き続けたり、深く落ち込んでいると、息が浅くなってしまい、さらに肺に負担がかかるという悪循環が生まれることもあります。気持ちの切り替えがうまくできないときは、肺を意識してケアするとよいかもしれません。
- 悲しみが続く・なかなか泣き止めない
- 大切なものや人を失った喪失感
- 落ち込みが深く・長く続く
- 憂鬱でふさぎ込む気持ちが抜けない
- 感情を外に出せず一人で抱え込む
- 呼吸が浅い・ため息ばかりつく
💭「肺」が乱れると、こんな気持ちになる
肺のはたらきが乱れると、ふさぎ込みやすくなる・元気が出ない・声が小さくなる・無気力になるといった変化が現れやすいといわれています。また、悲しくもないのに涙が出る・気力がわかない・意欲が低下するといった感情の変化も起こりやすくなります。鼻が詰まりやすくなったり、風邪をひきやすくなったりする体の変化が心の落ち込みを深める場合もあります。
こころのサイン
- ・ふさぎ込む・元気が出ない
- ・無気力・やりたいことが見つからない
- ・悲しくなりやすい・涙もろくなる
- ・声に張りがなくなる・話す気力が出ない
- ・過去のことを引きずりやすい
- ・気持ちの切り替えが苦手になる
- ・孤独感が強まる
からだのサイン
- ・咳・のどの不快感
- ・鼻づまり・鼻水・鼻の乾燥
- ・息が浅くなりやすい
- ・皮膚が乾燥しやすい
- ・風邪をひきやすい・免疫が落ちる
🌿「肺」を整えるヒント
- ✓深呼吸(特に息をゆっくり長く吐く)を意識して、肺をやさしく動かしましょう
- ✓泣きたいときは思い切り泣いて、悲しみを外に出すことが大切です
- ✓白い色の食材が肺を助けるとされています(大根・白ごまなど)
- ✓乾燥する季節は部屋を適度に加湿して、肺の潤いを保ちましょう
- ✓歌を歌う・声を出すことも、肺と気持ちを元気にするとされています
- ✓悲しみや喪失感を感じたら、まず「今の気持ち」を受け入れてあげましょう
- ✓自然の中でゆっくり過ごし、新鮮な空気を吸う時間をつくりましょう
おすすめの食べもの

腎(じん) — 恐れ・おどろき
生命力をたくわえる「意志とがんばりの源」
🌱 どんなはたらき?
腎は、生まれ持った生命エネルギー「精(せい)」をたくわえる場所とされています。意志の強さ・がんばり続ける力・冷静さ・自分を信じる力などに深く関わると考えられています。また、ホルモンバランスや成長・老化とも関係しており、腎が充実していると、落ち着きや「芯の強さ」が生まれやすいとされています。
😔 こんな気持ちが続くと「腎」が乱れる
強い恐れ・慢性的な不安・おびえ・びっくりするような体験が続くと、腎のはたらきが乱れやすいと考えられています。また、無理をしすぎてエネルギーを消耗する「がんばりすぎ」も、腎の「精」を使い果たしてしまうといわれています。特に「ずっと緊張している」「安心できる場所がない」という状態が続くと、腎への負担が大きくなります。
- 強い恐れや慢性的な不安が続く
- おびえ・パニックになりやすい
- 大きなショックやおどろきを受ける
- 過労・睡眠不足で消耗が続く
- がんばりすぎてエネルギーを使い果たす
- 自分への自信がなく、常に緊張している
💭「腎」が乱れると、こんな気持ちになる
腎のはたらきが乱れると、気力がわかない・こわがりになる・些細なことに不安を感じやすくなるといった変化が現れやすいといわれています。また、自信が持てなくなる・物忘れが増える・集中力が続かないことも。体の冷えや足腰の疲れを感じると、気持ちまで落ち込みやすくなることもあります。「根っこの部分でのエネルギー切れ」がこころに影響するイメージです。
こころのサイン
- ・気力がわかない・やる気の底が抜けた感じ
- ・こわがり・不安が強くなる
- ・自信が持てない・自己肯定感が下がる
- ・物忘れが増える
- ・集中力が続かない
- ・孤独感・心細さを感じやすい
- ・意志が弱くなり、決断できない
からだのサイン
- ・腰や膝が疲れやすい・だるい
- ・耳鳴り・聞こえにくい感じ
- ・体が冷えやすい(特に腰・足)
- ・夜中に何度も目が覚める
- ・髪が抜けやすい・白髪が増える
- ・むくみ・尿の変化
🌿「腎」を整えるヒント
- ✓無理なく規則正しく眠ることが、腎のエネルギーを補う基本です
- ✓黒い食材(黒ごま・黒豆・わかめなど)が腎を助けるとされています
- ✓腰や足を冷やさないよう、靴下や腹巻きなどで温めましょう
- ✓「がんばること」と「休むこと」のバランスを意識して過ごしましょう
- ✓恐れや不安を感じたら、安心できる人・場所・ルーティンを作りましょう
- ✓ゆっくりとしたストレッチや太極拳など、穏やかな運動が腎にやさしいとされています
- ✓自分の「できたこと」を毎日ひとつ見つけ、自信を少しずつ取り戻しましょう
おすすめの食べもの
📖 言葉の解説
- 精(せい):生まれ持った生命エネルギーのこと。親からもらったエネルギー(先天の精)と、毎日の食事・休養で補うエネルギー(後天の精)の2種類があると考えられています。腎にたくわえられており、使いすぎると老化や疲労につながるとされています。

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